非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
確かこれからプレス発表会用の資料を、一斉に印刷すると言っていたはず。

「どうしたんですか?!」

いち早く異変に気がついた楠木が、デスクに駆け寄る。

矢島はひどく動揺しているようで、身体を震わせながら必死に声を絞り出そうとしているが、言葉が出てこない。
矢島が何とか指をさしたディスプレイを覗き込んだ楠木が、目を見張った様子が見えた。

「ファ、ファイルを開こうと、クリックしたら……急にメッセージが出て……」

その場にいた社員も、何事かと周りに集まり、一毬も近くに駆け寄る。

画面を覗き込むと、そこには次々とポップアップが表示されていた。
その文字を見た途端、一毬は思わず目を見開き口元を両手で覆う。

“ファイルを削除しました……”

“ファイルを削除しました……”

“ファイルを削除しました……”

いつの間にか画面はメッセージでいっぱいになり、埋め尽くされ尚も増殖し続けている。
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