非・溺愛宣言～なのに今夜も腕の中～

「どのファイルを操作しようとしたんだ？」

湊斗は倒れそうにふらふらとしている矢島を椅子に座らせると、自分も近くの席に腰かけた。

「あの……“プレス発表会資料：印刷用”って書かれたファイルで……」

震える矢島の言葉を聞いた途端、倉田が机に手をつきながら身を乗り出した。

「え？　ちょっと待って！　俺はファイルに、そんなタイトルつけてないよ」
「え……？！　で、でもフォルダに入ってましたよ。だから、すぐにそれだと思ってクリックしたんです……」

矢島は訳がわからない様子で、必死に首を横に振っている。
湊斗は顎に手を当てると、じっと考える様子を見せていたが、しばらくして身を乗り出したままの倉田の顔を見上げた。

「遼、お前が印刷用の資料を入れたのは、どのフォルダだ？」
「プレス発表会フォルダの中の、さらに“当日配布資料”って書かれた鍵付きのフォルダだよ」

指で空中にフォルダの図を描きながら説明する倉田の言葉を聞いた途端、矢島が声を上げ震えながら立ち上がった。