非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~【コミカライズ原作】
「じゃあ、これで決まりだな」

「へ?」

 一毬は顎先を持ち上げられたまま、キョトンと首を傾げる。

 目の前では、湊斗のにんまりと楽しそうな顔が揺れていた。


「お前、名前は?」

「さ、佐倉一毬です……」

 湊斗は「ふーん」とつぶやくと、しばらく考え事でもするように、長い指を一毬の顎先から頬へと移動させる。

 そして急に一毬の頬を、むぎゅっと掴んだ。

 一毬はぎょっとして、反射的に身体を起き上がらせる。


「一毬。お前にもう一つ、仕事をやるよ」

「え?!」

 一毬の声を聞くか聞かないかのうちに、湊斗はパッと手を離すと、テーブルに置いてあるスマートフォンに手を伸ばした。

「あぁ、牧か? 俺だ……」

 電話をする湊斗の声を聞きながら、昨日一毬を厳しく見つめていた男性の姿を思い出す。

 秘書と言っていたのは、きっとあの男性の事だろう。
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