非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~

大きな反乱

「あれ? 湊斗社長じゃないんだぁ」

画面に映し出された倉田の映像を見て、吉田が素っ頓狂な声を上げた。

プレス発表会の様子は、社内にWEBでライブ配信される。
社員は自分の席で視聴することになっており、それぞれの部署で発表会が始まるのを待っていた。

ウイルス騒動のことは、総務部を含む一部の被害の出た部署以外には、未だに明かされていない。
この騒動と湊斗の襲撃事件が関連がある可能性もあり、犯人の関係者が社内にいることも考えて、安易に周知しない方が良いと上層部で決まったのだ。
総務部でも、あの騒動が嘘だったかのように、今は穏やかな時間が流れていた。

「楠木くん、今日は大活躍だったわね。お疲れ様」

吉田がパソコンの間から顔を覗かせる。
楠木は吉田の声が聞こえないのか、しばらく呆然としていたが、吉田が「楠木くん?」と声をかけると慌てて小さくうなずいた。
< 152 / 268 >

この作品をシェア

pagetop