非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~【コミカライズ原作】
「人の気も知らないで、自分だけ善人ぶる。そういう所がイラつくんだ」

 楠木はそう吐き捨てると、顔を逸らした。

「お前、それでウイルスをバラまいたってわけか。湊斗を襲わせたもの、お前なんだな?」

「は? 襲わせた? 何のことですか?」

「しらじらしい。お前が今回の騒動の犯人なんだろ? 研究自体をつぶせなくて残念だったな!」

「倉田さん、何を言ってるんですか? ウイルス騒動の犯人は僕じゃない」

「お前なぁ!」

 牧に腕を押さえられながら身を乗り出す倉田に、楠木が眉をひそめる。

 一毬は楠木の様子に小さく首を傾げた。

 もしかしたら楠木は、湊斗が襲われたことを知らないのではないだろうか?


「もう一度聞く。楠木、お前は何の目的でTODOに入った?」

 湊斗の問いかけに、楠木は何も答えない。

 理由を言う気は最初からない、ということか。

 湊斗は深く息を吐くと、デスクに置いてあった資料を手に取った。


 あの資料には何が書かれているのだろう。

 一毬は瞳を揺らしながら、湊斗と楠木の背中を見つめた。

 湊斗はしばらく躊躇う様子を見せたが、小さく息を吸う。
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