非・溺愛宣言～なのに今夜も腕の中～

父との会話

「お前、自分がしたことの重大さがわかってるのか！」

会長室に入るなり、湊斗に父の怒号が飛んできた。
一毬に真実を話した後、湊斗は父に呼び出されてここに来ている。

結局父は、湊斗が入院している間、病院へは一切顔を見せに来なかった。
大方、倉田のプレス発表会での発言を受けて、菱山への対応に追われていたのだろう。

「すぐに撤回しろ。私は今から、菱山社長の所にお詫びに行く」

父は立ち上がると、秘書を呼ぶために電話の受話器を取り上げた。

「それはできません」

湊斗の静かだが、揺るぎのない声が響く。
父は取り上げた受話器をデスクに叩きつけると、恐ろしい顔で湊斗を睨みつけた。

「今まで、どれだけの支援をしてもらったと思ってるんだ。今更、無かったことになどできるか！」
「無かったことにはしません。開発の方向性を変えるだけです。菱山がそれで撤退するというのなら、その時の話です。受けた支援はすべてお返しします」