非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
湊斗にだって、そんなことはわかっている。
だからこそ、一時は一毬を想う自分の気持ちから逃げ出したのだ。

湊斗は、ついさっき社長室で見た、一毬の顔を思い出す。
湊斗の真実と告白を聞いた時、一毬は戸惑い、涙を流しながらじっと佇んでいた。

一毬が何を思ったのか、確認するのは怖い。
でももう、一毬を愛する気持ちからは逃げたくないのだ。

――たとえ真実を知った一毬が、俺から離れる事を選んだとしても……。

湊斗は顔を上げると、父を正面から見据えた。

「紫さんの件と、製品開発の件は別の話です。プレス発表会の内容は撤回しません。社内にもそのように周知して、今後スケジュールを進めます」
「湊斗!」

湊斗は静かに頭を下げると、父の声を無視して扉を開く。

「待つんだ! 湊斗!」

父の声が背中越しに聞こえてくる。
湊斗はぴたりと足を止めると、静かに振り返った。

「父さん。この会社の社長は私です」

湊斗は「失礼します」と小さく言うと、パタンと扉を閉じた。
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