非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~【コミカライズ原作】
「大丈夫ですよ」

「……え?」

「佐倉さんなら大丈夫です。たとえどんな状況だったとしても、社長から離れたりなんかしませんよ」

 牧の言葉に湊斗は目を丸くした。

 漠然と抱いていた不安を、牧は最初から感じ取っていたのか。


 湊斗はずっと、真実を知った一毬が自分から離れるなら、それは仕方がないと思っていた。

 そうなったら諦めるしかないと。


 ――いや……違う。


 頭で自分に、そう言い聞かせていただけだ。

 本当は、一毬を失うことが怖くて仕方がなかったのだ。

 牧に『大丈夫だ』と言われて、初めて気がついた。


「格好悪いよな」

 小さくつぶやいた湊斗に、牧が大きく首を横に振る。

「愛を知れば、人は臆病になるんです」

「……牧?」

「でも反対に力ももらえる。二人で乗り越える勇気です。前に進むと決めたのは、社長ですよ」

 その時、湊斗の耳に廊下を駆けてくる足音が響いた。

 牧は「ほら」とほほ笑んでいる。

 足音は社長室の前まで来ると、ぴたりと止まる。
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