非・溺愛宣言～なのに今夜も腕の中～

噂話

「おはようございます」

一毬がいつも通り出社すると、慌ただしく社員が行き来する姿が見える。
普段よりもバタバタと動き回る人たちを見ながら、一毬は不思議そうに首を傾げると総務部のあるフロアに向かった。

今日は何かある日なのだろうか？
するとちょうど同じ総務部の先輩の女性社員と、廊下で一緒になる。

「おはようございます。今日は、皆さん朝から忙しそうですね」

一毬がチラッと奥の方へ目をやりながら声をかけると、先輩女性の吉田が渋い顔を向けた。

「あぁ、今日はお偉いさんが来るからさぁ。そういう日は、朝から社内全体がピリピリムードなのよぉ」

入社して長いと言っていた吉田は、やれやれとため息をついている。

「お偉いさんって？」

一毬は総務部の扉に手をかけると、押し開きながら先に吉田を中へ通す。

「うちの一番のお得意様の商社の社長。だから今日は、会長と社長自らお出迎えだってさ」