非・溺愛宣言～なのに今夜も腕の中～

すらっと高い身長に、艶のある黒髪。
風に揺れる長めの前髪からは、見た人の心を一瞬で射抜くほどの、鋭さを含んだ切れ長の目が覗いている。
男性は明らかに、周りを寄せ付けないオーラを放っていた。

「社長。そちらでお待ちください」

牧と呼ばれた男性はそう声を上げると、厳しい顔つきでぐるりと一毬たちを見回す。

「うちの会社の敷地内で何をされているんですか？　場合によっては警察を呼びますよ」

牧の静かだが響く声を聞いた途端、一毬を脅していた二人組はチッと舌打ちをし、肩を丸めるようにそそくさと立ち去った。
一毬は内心ほっとすると、その後ろ姿を目で追う。
牧はというと、男たちを一瞥した後、すぐに一毬に厳しい顔を向けた。

「あ、あの……」

一毬が声を出そうとした時、足元にドサッと何かが投げ落とされた。
店長が手に持っていた大きな荷物を、一毬の足元に投げつけたのだ。