非・溺愛宣言~なのに今夜も腕の中~
時折グラフが見えたりしていたので、何かの資料を作成しているようだったが、一毬には初めて見る画面で内容はわからなかった。

あの告白めいた発言以降、楠木は何事もなかったかのように淡々としている。
一毬自身も『ただの勘違い』だったのではないかと思い始めるほどだ。

「どうしたの?」

一毬の視線に気がついたのか、楠木が笑顔で振り返った。
一毬は見ていたことを気がつかれたことに動揺して、思わず大袈裟に視線を逸らす。
すると、楠木はすかさず一毬の隣にキャスター付きの椅子を転がし、耳元にそっと顔を近づけた。

「今日この後、少しだけ時間ある?」
「え……?!」

一毬が動揺して裏返った声を出すと、楠木はくすっと肩を震わせながら自分のパソコンの電源を切る。

「よかったら食事して帰らない?」
「しょ、食事ですか?!」

一瞬、一毬の瞼に湊斗の顔が映った。
普段湊斗はたいてい帰りが遅く、夕飯はそれぞれで済ませるようにしていた。
一毬が誰かと外食して帰ったところで、湊斗は何も言わないだろうが……。
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