一晩だけのつもりだったのに、スパダリ専務の甘い手ほどきが終わりません……なぜ?

「君は綺麗だ。もっと自信を持っていい」

 歯が浮くほどのキザな台詞が恥ずかしげもなく紡がれ、光莉は恥ずかしさのあまり瀧澤から顔を背けた。

「ほら、私が嘘を言っていないかよく見てごらん」
 
 長い指先が頬に添えられ背けた顔がすぐに戻されていく。光莉は恐る恐る瀧澤を真正面から見据えた。ベッドライトに照らされた瀧澤の瞳は目の前の女性と早く睦み合いたいと、滾る男のそれだった。

「あうっ……」

 日に焼けた肌をきつく吸われ、首筋に所有印のような赤い痕が刻まれる。バスローブがはだけられ、露わになった胸の頂きが舌で転がされると、甘く疼く身体がビクンと震えた。

「君の身体に恥じるところなんてひとつもない」

 傷ついた心を優しく包み込むような言葉は、まさに光莉が望んでいたものだった。
 ガチガチに緊張していた身体はいつのまにか瀧澤に素直に従うようになり、与えられる快感を貪欲に味わっていた。

(瀧澤専務に抱かれるなんて……)

 ドキドキと胸が高鳴るのは勤務先の専務とただならぬ関係になったという背徳感のせい?それとも別の理由?

「は、あっ……久志さんっ……!」
「そうだ。私に君のすべてを見せてくれ」

 ギシリと軋むベッドの上、二人は手に手を取り合い高みに上り詰めていく。
 この状況では余計な思考を挟むのはひどく難しかった。
 光莉は瀧澤から施される愛撫に没頭し、次第に何も考えられなくなっていった。
 瀧澤に抱かれたこの日は、光莉にとって生涯忘れられない一夜になった。
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