一晩だけのつもりだったのに、スパダリ専務の甘い手ほどきが終わりません……なぜ?

「うん。斗真、結婚するんだってね。びっくりしちゃった」
「二次会、呼ばれてるじゃん?行くの?」
「行くよ。お祝い事だもん。誘われたのに欠席したら失礼でしょ?」

 元カレの斗真から結婚するというグループメッセージが投稿されたのは、ひと月半前。ちょうど、瀧澤とテニスの練習が始まった頃だ。
 同じ大学の同期生宛に二次会参加が呼びかけられ、光莉にもお声が掛かった。あちらから誘っているのに避けるのもどうかと思い、光莉は出席を表明したのだった。

「ねえ、未だに彼氏を作らないのは斗真に言われたことをまだ気にしているからじゃないよね?」
「やだなあ、たまたまだよ。付き合いたい人がいないだけ!」
「いい加減忘れてもいいと思うよ?もう七年も経ってるんだしさあ……。ほら!瀧澤さんなんてどう?最高に良くない?」

 瀧澤を恋人候補にと力説する奈緒に光莉は苦笑した。どうやら奈緒はとにかく瀧澤をあてがいたいらしい。

「っていうか瀧澤さんなら私も大歓迎かな?大人の色気ムンムンで優しく抱いてくれそう……」

 よからぬ妄想で目尻が下がる奈緒を光莉はジト目で睨みつけた。

「……いい加減にしないと、理一くんに本当に言いつけるよ?」

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