聖人君子のお兄ちゃんが、チャラ男になったなんて聞いてません!
「どれかには受かると思うんだよねー。一応、スポーツ推薦枠でのオファーもあるんだけどさ、故障してもし走れなくなったらその後が大変だから、一応一般枠で入るつもり。希望してる学部もあるし。」
そう話す矢嶋の横で、菜々は寂しさを覚え、黙っていた。
「…もしかして、俺がいなくなると寂しい?」
ニヤッと笑って冗談っぽく言った矢嶋に、菜々は正直な気持ちを伝えた。
「…寂しい、です。」
その言葉を聞いて、矢嶋は驚いたように目を見開いたが、フッと笑うとポンポンと菜々の頭を撫でた。
「まぁ、死ぬわけじゃないんだし、会おうと思えばいつでも会えるよ。橋本ちゃんに呼び出されたらソッコー行くし。」
「ホントですか?」
「もちろん!いつでも話聞くよ。」
「それじゃあ…」
菜々は、いつもなら自分から言わないことをドキドキしながら言った。