推しの歌い手さま~想像してたのと違うんだが…~
○校内見学中の階段



しばらくして穂香が階段を駆け下りた曲がり角で、思いっきり誰かにぶつかった。


穂香「すっ……すいませんっ!!」


穂香はすぐに頭を下げて謝る。


穂香(こういう時、少女漫画ならぶつかった男の子がイケメンで恋に落ちるんだよね?)


穂香の頭の中では、イケメンが立っていて、「大丈夫?」と手を差し出してくれる妄想が広がるが、頭を上げると現実を見せつけられる穂香。


茶髪の男「おいっ!!しっかり前を見ろよっ!!お前1年かっ!?」


現実は少女漫画ではない。
茶髪のチャラそうな男が怒った顔で立っていた。


穂香「はい。1年です。本当にすいませんでしたっ」


そのまま通りすぎようと穂香は足を進めたが、学校に遅刻してきても微動だにしない茶髪の男が許してくれるはずなどない。


穂香は手首を捕まれて、足を止められてしまった。


茶髪の男「うーん。そうだなぁ?誰か可愛い子を紹介してくれたら許してやるよ?」


ニヤニヤと意地悪そうに見つめてくる茶髪の男に、言い返す言葉がない穂香。


穂香(そんなの無理だよ……まだ亜美と知り合った程度で、学校に友達がいるわけでもないし。元々友達が多いわけでもないし……)


穂香「そんな……無理です……」


困惑する穂香に茶髪の男が凄んだ。


茶髪の男「はぁ?無理だと?何が無理なのか言ってみろよっ!!思いっきりぶつかっておいて。じゃあ金か?」


穂香「それも無理です……」


今にも泣き出しそうな穂香は俯いたまま、静かに声を振り絞る。


穂香「すいません……許してください……」


その時、聞き覚えのある声が聞こえてきた。




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