推しの歌い手さま~想像してたのと違うんだが…~
世界最高のはしご車の高さが100メートルであり、そうそう見かけるものではないが、穂香は100メートルの細いはしごで降りる想像から頭が離れずに泣いてしまう。


穂香「航太くん……怖いよ……」


不安いっぱいの穂香に対して、航太は穂香の背中を擦って落ち着いた様子を見せる。


航太「もし、はしご車で降りることになったら、俺が穂香ちゃんを絶対に守るから。俺が先に降りて、穂香ちゃんが足を滑らせても絶対に受け止めるから」


穂香(受け止めたりできないなんてわかってる……わかってるけど、航太くんの塩対応な部分もほーんって変な返事も吹き飛ぶくらい、好きって思っちゃう……)


頼もしい返事をくれる航太にしがみついている穂香は、涙声で何度も同じような話をしてしまう。


穂香「航太くん……無事に下まで降りられるよね……?大丈夫だよね……」


穂香は涙目の向こうに見える航太が、不安そうに窓の下を眺めているのを見てしまった。

それでも航太は穂香がそんな言葉を繰り返すたびに、頭を撫でて笑顔を見せる。
穂香を安心させるために。


航太「大丈夫だよ。絶対に穂香ちゃんを無事に帰らせるから安心して」


穂香「うん……」


観覧車が停止して5分ほどすると、天井からアナウンスが聞こえてくる。


アナウンス「ただいま停電の為、停止しております。誠に申し訳ございません。もうすぐ運転を再開しますので、少々お待ちください」


観覧車が停電した場合、別のバッテリーで動くので穂香がテレビで見たことのあるはしご車で降りるというのは希なことである。


穂香「あっ!!動いた。よかった~」


航太「うん。良かったね?」



(ハートの窓のゴンドラ。終了)



こうして観覧車から無事に降りられた。
遊園地からの帰り道の話題は、どうしても日常にはない観覧車が頂上付近で止まったから怖かった。という話ばかりになってしまう。


穂香(あの航太くんの大好きは、告白だったのかな……?もし止まらなかったら、どうなってたんだろう?
もう一度さっきのお互いの事をどう思ってるか?って質問やりたいけど、今さら言えないし……)


穂香は電車の中でそんな事を思ったが、言い出せないまま、帰路についた。











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