推しの歌い手さま~想像してたのと違うんだが…~
○卒業式当日。卒業式が行われる体育館。


少しずつ暖かくなり始めた3月初旬。
穂香の学校の卒業式は体育館で行われる。

本日の主役の3年生が、緊張した面持ちで座っている中、校長の長い話が続く。


校長「高校を卒業すれば、みんな大人です」


穂香の後ろに座っている亜美が、背中を突っついてくる。


亜美「卒業すれば大人になる。なんて、いちいち言わなくてもわかってるって」


穂香「良い話もあるかもしれないから、ちゃんと聞いてようね?」


しかし校長の話は、頑張れ。夢を諦めるな。などの綺麗事ばかりで頭に入ってこない。


校長の話。PTAの会長の話。生徒会長が受け取る卒業証書授与。


穂香の座っているだけの時間が終わり、卒業生退場の時間。


体育館の出口に向かって、保護者達の拍手の中を整列して歩く卒業生。


その時、保護者の方からブツブツと話す男の声が聞こえてきた。


男の声「はぁ……俺の卒業は半年後だから、まだ子供かぁ……お子さまランチ食べられるのかなぁ……」


穂香が保護者の並んでいる列を見ると、最前列に、キャップを深々と被り、サングラスで変装している男がいた。


それを見て驚いた表情を見せて、整列しながら歩いている列から飛び出した。


穂香「航太くんっ!!」


穂香はそのまま、飛び付くように航太にハグしてしまう。


穂香「日本に帰って来たのーっ!?おかえりーっ!!」

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