甘い罠、秘密にキス


「そういえば私ずっと思ってたんですけど、佐倉さんと日向リーダーって息が合ってますよね」

「え?」

「なんて言ったらいいんだろう。あまり言葉は交わさなくても、お互いが何を伝えたいのか分かってるというか…」


確かに、奴とは必要最低限の言葉しか交わさないようにしていた。二人きりにならないよう、必ず周りに誰かがいる場所で。

でもそれは息が合っているからとかではなくて、ただ単になるべく接触しないようにしていただけで…。


「日向リーダーも佐倉さんのことは信頼している感じがしますし、佐倉さんも日向リーダーのこと頼りにしてますよね?」

「そう…かな」

「あれ、違いました?」


向こうがどう思っているかは私には分からないけれど、私は桜佑を頼っているつもりは…。

……いや、川瀬さんの言う通り仕事に関しては桜佑を信頼しているのかも。仕事に対する姿勢も嫌いじゃないし、本社にいたからか要領もよく無駄がない。

それに、仲は良くなくても昔一緒にいた分、彼が何をしようとしているのかは何となく分かってしまう。反対に桜佑も私の性格を理解しているからか、指示や指摘がいつも的確だ。

昔はよく“お似合い”と冷やかされることはあったけど、息が合っているなんて言われる日がくるとは思わなかった。

それだけ私達も大人になったということだろうか。

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