婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。


天王寺グループの跡取りも、ぶっちゃけどうでもよかった。
父に言われるがまま勉強してきたけど、本気でなりたいとは思ってなかった。


「でも妃乃と出会って変わった」

「え……?」

「俺は正直再婚には複雑だったんだ。親父の奴、一回結婚に失敗してるくせにって。
でも、妃乃は積極的に俺や親父と家族になろうとしてくれただろ」

「私は…物心つく前に父と死別して、辛い思いしながら一人で私を育ててくれたお母さんを見てたから、お母さんに幸せになって欲しくて」

「妃乃のそういう真っ直ぐで優しいところに惹かれたんだよ」


妃乃と母さんが来てから、家の中が明るくて温かくなった。

ずっと罵倒し合う冷たい空気しか知らなかった俺にとって、これがあるべき家族の姿なんだと思った。
あまりにも心地よくて幸せだと感じる一方、妃乃に触れたいと思う気持ちも膨らんでいった。


「一度は諦めたけど、もう絶対諦めないって決めたから。俺が欲しいと思ったものは全部手に入れてやるって決めた」

「ふふっ、それでこそ王様だね」

「だろ?」


そう微笑んで妃乃の手からアルバムを取り上げる。


「…そろそろ昔の俺じゃなくて、今の俺に構ってくれない?」

「昔の自分にまでヤキモチ妬くの?」

「悪い?」

「ううん、好き……」


抱き寄せて触れるだけのキスして、目が合うと笑い合う。
こんな時間が幸せで、誰にも邪魔されたくない。

だから、絶対に認めさせてやる。

妥協せずに全て手に入れると誓ったから。


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