婚約破棄されたらエリート御曹司の義弟に娶られました。


よかった……これで本当に歩とはお別れだ。

もう二度と会うことはないだろう。
私のことは綺麗さっぱり忘れて欲しい。


「皇輝、ありがとう……」


安心して気が抜けたのか、急に体中が重くなる。


「妃乃!?大丈夫か!?」


さっきからずっと体が熱い……。
なんだか頭もぼうっとしてきた……。


「おいしっかりしろ!!熱あるじゃねぇか!!」


皇輝が私の額に手を置き、かなり慌てている。

そういえば、家を出る前に熱を測ったら、平熱より少し高かったな……。

37度はいってなかったから、大丈夫だと思って気にしてなかったけど――。



「――おい、妃乃!!しっかりしろって!!」



皇輝が私を呼ぶ声だけが耳に響く。

でも、ぼうっとして頭が回らない。


――あ、これ、ダメなやつだ。



「妃乃……っ!!」



私は瞼を閉じ、意識を手放してしまった――。




< 75 / 186 >

この作品をシェア

pagetop