フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜

 端正な相貌を忌々しげに歪ませて声を震わせる奏は、激情を抑え込むようにしてか、テーブルの上で握った拳をなおもギリギリと握りしめワナワナと打ち震わせている。

 穂乃香は奏から聞かされた予期せぬ言葉の数々に大きな衝撃を受けていた。

 けれどもすべては穂乃香を守ろうとしてのことだったのだと理解できる。

 何より、そんなにも想ってもらえていたのかと、嬉しいくらいだ。

 ただ情報が一気に流れ込んできたせいで、何から処理すればいいかがわからない。

 情報処理に努めていた穂乃香の意識に、今度は酷く沈んだ奏の低い声音が流れ込んできた。

「また穂乃香が傷つけられるんじゃないかと不安だった。それ以上に、あの男に囚われている穂乃香があの男を選ぶんじゃないかって、それが怖くて堪らなかったんだ。だから言えなかった。元はといえば、穂乃香の知らないところで俺が余計な真似をしてしまったがために招いたことでもあるしな」

 どうやら奏は自分が行動を起こしたがために、未遂で済んだとはいえ、穂乃香に危害が及んだことを悔やんでいるらしい。

 そして何よりも、穂乃香を失ってしまうのを恐れていたのだという。

 慰謝料については、遅かれ早かれ叔母に問いただされて法的手段をとっていたと思う。当然同じ状況になっていただろうことも想像に難くない。

 確かに驚きはしたけれど、そのことで奏を責めるつもりなどまったくない。
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