おともだち
「ごめんなさい」
「あー、別に。いいよ。お互い求めるものが違っただけで。ごめんね、思ったより普通で」
「そうじゃなくて、失礼なイメージを持ってしまって。高値の花過ぎて、付き合うとか考えるのがおこがましくて出来たイメージだと思う」

 ……思うってことはほんとにそんな噂があんのかい。

「で、仁科さんは俺と……あれ? 何かおかしくない? ワンナイトは断るけど、セフレにはなりたい? 俺と継続的な関係を築きたいってこと。いや、違うよな。セフレっていつ終わってもいい関係だと思ってたんだけど、仁科さんは違うわけ? 」
 半ば自暴自棄で質問を投げかけた。仕方ないだろ、この気持ちのやり場がなかったんだから。まさか好きになった人がセフレのいるような人だとは思わないじゃないか。

「私、誰かと付き合うの向いてないって気づいちゃって。でも、恋愛はしたくて。毎週必ず会うとか、記念日は二人で過ごすとかそうじゃなくて、私のタイミングで側にいて欲しい時だけ会いたいなって。そんな自分勝手な扱いを恋人には出来ないでしょ。でも私が望むお互いに期待しない関係が“セフレ”という形なら実現するのかなって」
「……今まで、セフレっていたことない……の? 」
「うん。無いよ。私、今まで付き合った人三人なんだけど、しかも三人目は付き合ったうちに入らないかも。これって多い? 少ない? 」

 ゴクン。自分の酒を飲み込む音が耳の奥で聞こえた。……ほぼ二人ってことか。少ない。セフレなんて口にする子の人数じゃないだろう。

「身体の関係を持ったのは? 」
「そのまま、二人だよ」

 当たり前でしょ、とでも言いたそうに彼女は首を傾げた。

「そっか。いや、少なくはないんじゃない? 」
 
 何となくいい気分ではなくなってそう言ってしまったけど、同時に彼女を急かすような気持ちも出てきた。

「セフレの条件って都合がいいって他に何かある? 仁科さんにとって」
 つまり、何で俺か。聞きたかった。出来れば俺の望む答えを、俺はまだ彼女に期待していた。
 
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