桜の下で微笑むキミの夢を見る



 そんなわけで、二人で入れば怖くないと少々強気で店に足を踏み入れる。

 上品な明るさの照明の店内は一面のガラス張りになっている。逆に暗闇の中の桜を照らすライトは眩いほどに明るい。柔らかな色の中に浮かび上がったたくさんの桜は、幻想的でいながら大きな存在感を放っていた。

 案内された席でメニューを見ると、どうやらここはデザイン性の高い創作和食をメインにしているらしいことがわかった。

 何を頼んだらいいものか全くわからず、とりあえず一番上にあったものを頼むと、奇抜な形の皿に乗った、鯛か何かと思しき白身魚の刺身が運ばれてきた。上には色とりどりのエディブルフラワーが散らされている。



「これは……なかなか」



 無駄に大きな器に乗った小さな豆腐と大ぶりで芸術的なカットの野菜を見ながら、卓が呆気にとられた様子で呟いた。知り合いの店であってもるものの、どのような料理を出しているのかまでは知らなかったらしい。



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