桜の下で微笑むキミの夢を見る



 初めて会ったときは加菜の絵に描いたような小悪魔キャラに驚いたが、今ではもう慣れた。そして編集者として意外に有能なことも知っている。佑馬の知名度を上げたのは彼女の功績も大きいと思う。



「まずは次回作の話を。予定は京都のお寺を舞台にしたヒューマンドラマって話でしたねぇ。一度取材旅行は行くべきですね」


「はい」


「京都かぁ。いいですね。あたし、中学の修学旅行で行って以来、京都大好きなんですよぉ。金閣寺が一番好きで!」



 うっとりとした顔の加菜を見て思わず苦笑する。寺とはいえ、さすがに金閣寺は舞台に選ばない。この感じだと一日でいくつかの寺を取材した後、次の日は観光という流れになりそうだ。

 加菜はさらにいくつかの好きな観光地の名前を挙げた後、佑馬に聞いた。



「佑馬先生の学校も、修学旅行の行先は京都でした?」


「ああ……」



 佑馬は記憶を辿ろうと、ふっと目を細めた。

 どうだったか。実は、よく覚えていなかった。



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