桜の下で微笑むキミの夢を見る



「会社の方は驚くほど順調だ。無事昇進したしな。だけど小説の方はお前と違ってからっきしだよ」



 そして、瓶ビールをグラスに注ぐ佑馬を見てにやりと笑う。



「にしてもユウ、お前は本当にすごいな。サイン会も整理券は即終了の大盛況だったって話じゃないか」


「ありがたいことに」


「新刊も読んだ。高校のときから良い話を書いてたが、疎遠になってた数年でここまで差を付けられていたとはな」



 卒業以来会っていなかった卓と再会したのは二年前。出版者主催のパーティーでのことだった。

 その頃佑馬は業界でもまださして話題になっておらず、出席者リストから櫻田佑馬の名前を見つけた卓は本気で驚いたらしい。

 そして数年ぶりに再会を果たすと想像以上に話が弾み、それ以来二カ月に一回ぐらいのペースでこうして会うようになった。

 始めは高校時代と同じ呼び名を使っていたが、今はそれぞれ“ユウ”“卓さん”と呼び合い、昔よりむしろ仲良くなっている。



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