叱られた冷淡御曹司は甘々御曹司へと成長する

 私は須藤さんの方を見た。すると、彼女がいたずらな目を光らせている。

 「健ちゃんは織原さんと一緒に行ったお店の店員の名前です。彼女が休んでいると話したら心配していたんです、とーっても」

 小首をかしげて玖生さんに須藤さんが言う。何なの、その言い方。絶対勘違いされる。

 「ちょ、ちょっと須藤さん、違うでしょ」

 「何が違うのよ、ほんとじゃないの」

 玖生さんの顔が険しくなっていく。後ろにいる秘書の男性がちろりと心配そうにこちらを見た。

 「玖生さん、健ちゃんっていうのはね、須藤さんの……」

 私の口を須藤さんが押さえた。そしてにっこり笑う。
 すると、玖生さんはくるりと後ろを向いてエレベーターホールへ歩き出した。
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