【待ち焦がれてラブ・バージン】職なしパテシエールと訳あり御曹司の甘くおかしなプライマリー ~甘い焼き菓子が縁を結ぶちょっと不思議な溺愛じれキュンラブストーリー~

最悪のキス










 運命の日、白いコックコートからお気に入りのドレスに着替えた宮岡杏奈 (アンナ)はパーティホールに向かっていた。今日のドレスは自分に一番似合うと自負しているものを選んだ。首がすっきり見えるサブリナネックに、きゅっと絞ったウエスト、それから生地をたっぷり使った裾の広がったミニ丈。低い背をカバーしたいが、高いヒールは失敗しそうだから、改まった場所でも無理はしない。これがアンナにとってベストなスタイル。そして、このドレスがアンナに自信を与えてくれるのは、アンナが一番気にしている身長の割に大きすぎる胸が悪目立ちしないからだ。

 例えば、既製服の基準からすれば適当なSサイズのTシャツを着ると、胸元のプリントははちきれんばかりに左右に伸びきってしまうし、深いUネックや大きく開いたデコルテネックでは胸の谷間がたっぷりと見えて品がない。だからアンナは自分に似合わない服を人よりよく心得ていた。胸を自分より上の視点から男性に眺められるのも、ひどく嫌っていた。ときどき同性からうらやましがられるくらいでは、不躾な男たちの品定めするような視線に耐えることと、胸のせいで着たいと思う服をいつもあきらめなければならないこととでは、到底引き換えにならない。
 エレベーターに乗り込むとひとりでにつぶやく。

 「大丈夫よね、ヒュー。このドレスが一番わたしらしいでしょ。それに今日見てもらうのは、わたしじゃなくて料理なんだから」
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