運命の恋を、君と…
恋着
梅雨入りして、ジメジメする日が続いていた。

そんなある木曜日の夕食中。

「━━━━結婚式?」

「あぁ。同僚の」
俊英は、会社の同僚の結婚式に招待された。

「そっか!」

「でさ。
場所はそんな遠くねぇんだけど、泊まりなんだよ。
結婚式は土曜日で、金曜に仕事終わってそのまま電車で向かって、日曜日の午前中に帰る」

「え?そうなの?
じゃあ、明日からいないんだ……」

「急でわりぃ……
ちょうど招待状もらったのが蓮花に再会した時くらいだったから、言うの忘れてたんだ」

「わかった!
寂しいけど、おめでたいことだもん!
楽しんできて?」

「………」
微笑む蓮花に、俊英は不服そうだ。

「ん?俊英?」
何故か不機嫌になった俊英を、首を傾げて見上げる。

「蓮花はさぁー」
「うん」

「なんで、そんな笑顔なの?」

「え?」

「楽しんできて?って、なんだよ。
もっと、言うことあるだろ?」

「え?え?」

「もういい!」
俊英はふてくされたようにベランダに向かい、煙草を吸いだした。

「俊英!!」
「なんだよ」

「なんで、そんな怒るの?」
「怒ってねぇよ」

「怒ってるじゃない!」
「怒ってねぇ!」

「怒ってる!」
「だからぁ!怒ってねぇよ!!」

「………お風呂、沸かしてくる」
蓮花は切なく瞳を揺らし、風呂場に行ってしまう。

「………離れたくないとか、行かないでとか言えっつうの!!
なんか俺だけが、寂しがってるみたいじゃん……!
…………って、そんなこと言われても行かないとならねぇんだが……」
俊英は一人、呟いていた。


風呂が沸き、俊英が先に入る。
浴槽に浸かり、ボーッと考え事をする。

考えることは、もちろん“蓮花”のこと。

「………態度…悪かったよな……俺…」

蓮花が微笑み“楽しんできて”と言ったことに、傷ついた俊英。
もちろん、寂しがったところでどうしようもないが、蓮花にもっと求められたかったのだ。

俊英は風呂を出て、蓮花の元へ向かった。

「蓮花」

「あ、上がった?
私も入って━━━━━」
「ごめん!!」

「え?」

「さっきは、ごめん!
俺、態度悪かった。ごめんな!」

頭を下げる俊英に、蓮花は微笑み“ううん!俊英は悪くないよ”と頭を撫でた。
< 36 / 61 >

この作品をシェア

pagetop