結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
第七章 最初で最後の旅行
いつ、家族に、会長に紹介される日が来るのか、戦々恐々として過ごす。
しかし、幸いというのはあれだが、会長が膝の手術で一ヶ月ほど入院するらしく、退院してからだと言われた。
もともと、矢崎くんの契約結果を見届けてから、かねてより悪かった膝の手術をするように予定を組んでいたらしい。
会長には悪いが、矢崎くんと一緒にいられる時間が延びたと、喜んでいる自分がいた。

「いい天気でよかったね」

「そうだな」

その日、私たちは休日出勤の振り替えを使って四連休を確保し、旅行に出かけていた。
私はもうすぐ次のイベントが動き出すし、矢崎くんもこれからいろいろと変わっていく。
その前に慰労会をかねて旅行に行こうって話になった。
きっと、これが最初で最後。
だからなにもかも忘れて、楽しもうと思う。
それでこれを、大事な想い出にするんだ。

「それで。
どこに連れていってくれるの?」

「着くまで内緒」

そう言って運転している矢崎くんは、教えてくれない。
ドレスコードがあるようなところには行かないと言っていたし、イブキも連れている。
ペットも可の温泉とかかな。
イブキは初めての旅行だし、車慣れしていないから近場だろうし。

高速でサービスエリアに寄る。
イブキももちろん、降ろしてあげた。

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