結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
第三章 家事はふたりでするものです
ひとまず、当座の荷物だけ持って矢崎くんのお家に移動した。

「新居、純華の意見も聞いて、とりあえずいくつか候補を挙げるっていうのでOK?」

「OKだけど。
でも、私がこっちに移ってくるっていうのでもよくない?」

矢崎くんの住んでいるマンションは広い。
リビングダイニングだけで私が今住んでいるマンションのリビングと寝室をあわせたくらいあるし、さらに寝室の他に書斎とゲストルームもある。
これだけあれば子供がいなければ……って、子供ができても余裕で生活できると思う。

「よくない。
子供ができたらマンションはなにかと不便だろ?
俺はのびのびと子供を育てたいし。
それにここは賃貸だからな」

嫌そうに眼鏡の下で彼の眉が寄る。
確かにマンションだと子供の足音とか声とか気にしないといけないから、そこはわかる。
しかし、賃貸が嫌って、それって。

「……新居、買う気?」

「買う気だけど?」

なに聞いてんの?って感じで矢崎くんは瞬きをした。
それは困る。
私的には非常に困る。
だって私としてはこの結婚生活は、彼が会社を継ぐと決まり、彼の両親、ひいては祖父である会長に紹介されるまでの期間限定のものなのだ。
……矢崎くんには言えないけれど。
< 48 / 193 >

この作品をシェア

pagetop