結婚直後にとある理由で離婚を申し出ましたが、 別れてくれないどころか次期社長の同期に執着されて愛されています
第五章 仕事にトラブルはつきものです
担当しているイベントが近づき、忙しくなっていく。

「……はぁーっ」

家で夕食を食べながら、大きなため息が落ちた。
ちなみに今日のメニューは冷食のハンバーグと家政婦さんの作り置きお惣菜、あとは矢崎くんが作ってくれたスープだ。

「どうした、そんなに大きなため息ついて」

苦笑いで矢崎くんが聞いてくる。

「チームの子が入院しちゃってさ……」

また私の口からはぁっと憂鬱なため息が漏れた。
足を折って入院したのは仕方ない。
しかし、その理由が階段を自転車で下っていてというのが解せない。

「『なんだかイケそうな気がしたんですよねー』って、小学生男子じゃあるまいし……」

再びため息が出る。
仕事の合間を縫って見舞いに行ったら彼は笑っていたが、笑い事ではない。
誰も巻き込まず、足一本で済んでよかった。
いくら酔っていても、やっていいことと悪いことがあるのだ。
そもそも自転車でも飲酒運転は禁止されている。
それも含めてこってり絞ってやったが。

「あー……。
それはちょっと、わかる、かも」

遠い目をしたあと、矢崎くんは笑って誤魔化してきた。

「えっ、ちょ、やめてよね!」

もしかして彼も、同じように自転車で階段下りがしたいのだろうか。
そんなバカな行動はしそうに見えないのだけれど。
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