バイバイ、リトルガール ーわたし叔父を愛していますー
秘密の恋の共有
夏休みのある日、すみれと琴子と綿貫、そして大原の4人で東京の下町にある小さな遊園地へ行った。

乗り物には綿貫と琴子、大原とすみれで座った。

琴子は積極的に綿貫に近づき、綿貫もまんざらではないような顔でそれに応えていた。

すみれの隣で大原はその様子を、切ない顔をしながらみつめていた。

そしてそれを知りながらも、琴子の恋の応援をしなければならないすみれは胸が痛くなった。

「しかし悠からダブルデートに誘われるとは思わなかったよ。」

綿貫は大原の肩を抱いた。

「ダブルデートじゃないよ。野口さんに誘われたからそれに乗っただけ。」

「ふーん。野口さんは悠狙いってこと?」

「違うよ。私は他に好きな人がいるから。」

すみれはそうキッパリと言った。

「じゃあなんで・・・?」

「いいじゃない。綿貫君、あれ乗らない?」

「ああ。」

綿貫は琴子にそう返事をしながらも、大原に目配せした。

「なんにせよ悠の交友関係が広がったのなら嬉しいよ。悠はすぐ内に籠ってしまうから。」

琴子は覚悟を決めたのか強引に綿貫の腕を掴み、アトラクションのある方へ引っ張っていった。

綿貫と琴子がはしゃぎながら観覧車へ乗り込むのを眺めながら、すみれと大原も後続の青い観覧車の中へ入り、向かい合って座った。

すみれはふたりきりの気まずさを何とかしようと、つい大原に尋ねてしまった。

「えっと・・・大原君は、その・・・いつから綿貫君のことが・・・。」

大原は長いまつ毛を伏せながら、ぽつりと話し出した。

「野口さんにはもうバレてるから正直に話すけど・・・。生まれた時から僕と直人は家が隣同士で幼稚園からの仲なんだ。元気で明るい直人は身体が弱くて内気な僕をいつも守ってくれた。僕はずっと直人に憧れていた。直人にとって僕は沢山の友達の内の一人かもしれないけど、僕は直人しかいなくて。」

「・・・・・・。」

「いつから直人が好きだったか・・・よく覚えていないな。気づいたら好きになってた。最初は友情だって思い込もうとしていたけど違った。直人に別の誰かが近づくと胸がひりひりと痛くて仕方がない。その相手が男であっても女であっても。僕だけが直人を独占したい。そんな気持ちになるのは直人ただ一人なんだ。」

「たしかに綿貫君って爽やかでリーダーシップもあって人望があるものね。実は琴子以外にも綿貫君を好きだっていう女子は多いみたい。」

「そうなんだ・・・。」

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