バイバイ、リトルガール ーわたし叔父を愛していますー
「さあて。やるか!」

そう気合をいれて腕まくりをすると、すみれは散らかった空き缶や紙くずをゴミ袋で分別し、服は綺麗に畳み、雑誌類は部屋の隅にまとめておいた。

埃っぽい床に掃除機をかけ、曇った窓を拭く。

窓を開け淀んだ空気を入れ替えると、部屋の中に初夏の風が吹き込んだ。

冷蔵庫を開けると、ビールの缶とミネラルウォーター、そしてカロリーメイトしか入っていない。

すみれはあらかじめスーパーで買ってきておいた食材を冷蔵庫へ保管した。

かろうじて米はあったので炊飯器で炊き、じゃがいもとにんじん、玉ねぎと豚肉を使って肉じゃがを作った。

ホウレン草のおひたしやみそ汁も手早く用意する。

自分以外の人間に食事を作るのは久しぶりだった。

白飯が炊けたタイミングで迫田の部屋のドアを叩いた。

「迫田さん。食事の用意出来ましたよ!せっかくだから食べてください。早く来ないと冷めちゃいますよ!」

しばらく待っていると、バツが悪そうな顔の迫田が、ようやく部屋から出て来た。

お腹が減っていたのか空腹には勝てないようで、ダイニングテーブルに座った迫田はすみれの用意した料理を前にして、素直に手を合わせた。

「・・・いただきます。」

「はい。どうぞ召し上がれ。」

迫田はみるみるうちに食事を平らげていき、食べてもらえない可能性も危惧していたすみれはその様子にホッとした。

自分が食べる様子をニコニコと眺めるすみれに、迫田が不思議そうな顔をした。

「君は食べないの?」

「はい。私はお腹いっぱいなので。」

「・・・ならいいけど。」

食事を完食した迫田は、片手で皿を持ち上げ、キッチンのシンクまで自分で運ぼうとした。

「迫田さん。私がやります。」

「いいよ。これくらい出来る。」

しかし積み上げた皿のバランスを崩し、食器が床に音を立てて落ちた。

「無理しないでください。まだ片手が不自由なんですよね?」

「・・・ごめん。」

「いいから迫田さんはソファに座っててください。」

すみれはそう言うと、床に落ちた皿を拾い、シンクで洗い物を始めた。

すみれに言われるがままソファに座った迫田は、突然の侵入者に落ち着きをなくしたようで、雑誌を読みながらも視線を泳がせていた。

雑誌をテーブルの上に置いた迫田はフチなし眼鏡を外し、すみれに声を掛けた。

「そんなに丁寧にやらなくてもいいぞ。どうせまたすぐ汚れる。」

「そしたらまた私が綺麗にします。」

すみれはそう言って迫田ににっこりと笑いかけた。

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