バイバイ、リトルガール ーわたし叔父を愛していますー
航は丁寧にすみれのブラウスのボタンを外し、自らを纏う衣を取り払い、すみれをきつく抱きしめた。

航の視線が自らの裸体を捉えているのが恥ずかしくて、すみれはギュッと目を閉じた。

「目を開けて俺の目を見て。俺に抱かれていることをちゃんと実感して。」

そう言って微笑む航の表情は、すみれが今まで一度も見た事のない顔だった。

それはひとりの女を求め、欲情する男の顔。

姪として接しているだけでは決して見ることが出来なかった顔。

甘く掠れた声。

熱く燃える瞳。

「すみれ。」

そう囁き、再びすみれの唇を貪る。

少女のすみれを呼ぶときのような優しい声。

そんな声で名前を呼ばないで。

まるで私を姪だと知っている航君に抱かれているような気持ちになる。

今の私は少女の頃の、姪のすみれじゃない。

ただのひとりの女、野口すみれだ。

押し塞がれた唇の中へ航の舌が侵入した。

舌を絡ませ、唾液が混じり、息が苦しくなる。

すみれの身体が航の優しい愛撫で包まれる。

全身に押される口づけに、その吐息に、指先に、痛いくらいの幸せをすみれは感じていた。

まるで深い海の底にいるような静けさの中で、ふたりは溶けあうように絡み合った。

「あっ・・・航君・・・」

航は束の間唇を離すと、すみれに囁いた。

「航君・・・か。なんだか俺、すごく罪深いことをしているような気分だ。」

「嫌・・・ですか?」

「ううん。すみれに名前を呼ばれるの嬉しい。航君って呼んで。」



航君。

私、すみれだよ。

貴方が育てたすみれだよ。



初めての痛みに、結ばれたその瞬間に、すみれの心はとろけた。

今、私は航君とひとつになれた。

航君の身体で、指で、吐息で、私は女になった。

私はこの時のために生きてきたんだ。

もう死んでもいい。

涙が頬を伝い、すみれの唇を濡らした。

「すみれ・・・大丈夫か?痛い?」

心配そうな表情を向ける航に、すみれは首を振った。

「ううん。嬉しくて・・・。」

「すみれ・・・。」

「航君・・・愛してる・・・」



――さよなら、少女の私
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