バイバイ、リトルガール ーわたし叔父を愛していますー
ずっと一緒にいたい
すみれは新しい環境に慣れるため、そして二人に嫌われないため、自分もこの家の役に立ちたいと思った。

桔梗に付いて食事の用意を手伝ったり、お風呂の掃除を積極的にした。

ゴミの分別も覚えたし、もちろん自分の部屋はキチンと整理整頓を欠かさなかった。

足の悪い桔梗の代わりに、買い物も手伝った。

「そんなに頑張らなくてもいいんだぞ?小学生なんだからもっと遊んでこい。」

航にはそう言われたけれど、そうすることで家族の一員になれた気がして、気付けば勝手に身体が動いていた。

桔梗の作る食事はほとんどが和食だった。

すみれの母はハンバーグやオムレツといった洋食を作ることが多かったので、焼き魚や筑前煮といった和食を食べるのがすみれには新鮮だった。

航はいつも夜7時前には帰ってくるので、桔梗とすみれと航と3人一緒に夕食を囲んだ。

テレビもそっちのけで、お互いのその日あった出来事を話す、何気ないその時間がすみれにはとても楽しかった。

「すみれはちびっこだから、もっとカルシウムをとらなきゃな。それでなくても日本人は平均して100mgのカルシウム不足なんだ。カルシウムが多く入っている食品といえば小松菜、納豆、チーズ、牛乳、そしてヨーグルトだ。」

そう言って航は背の低いすみれに、よくヨーグルトを食べさせようとした。

たしかにクラスで一番背が低いけれど、なんだか幼児を扱うみたいな航のその態度にすみれは頬を膨らませた。

「航君の背が高すぎるんだよ。私はそんなにちびじゃないもん。」

「そうか?俺の記憶ではこの前の運動会で、すみれが列の一番前に並んでいたように見えたんだが。」

「いいじゃないか。山椒は小粒でもぴりりと辛い、というだろ?」

桔梗がまぜっかえすとすみれも「そうだそうだ!」とやり返した。

「俺は背が低いことが悪いとは言っていない。あくまでカルシウムの話をしただけだ。保護者として子供の栄養状態に無関心ではいられないからな。」

「じゃあこれからはちびっこって言わないでね。」

「それはいいだろ?ちびっこはちびっこだ。」

そう言って航は肩をすくめた。
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