王様のなかの太陽
あるところに
ふたつの国の
王子様がおりました

ひとりは氷の王子様で
ひとりは太陽の王子様でした太陽の王子様の
お母様はご病気でした

太陽の王様は、王女様の
ご病気に
苦しんでおられました太陽の王子様は
強い苦しみと怒りを
その心に宿しましたが
王子様は心臓に
熱い熱い太陽を宿し
それを焼き殺すようになりました

氷の王子様は思いました。
太陽の王子様は、
このまま自分自身を焼き殺して
しまうだろうと。

氷の王子様はいつも
自分の氷の棘を太陽の王子様の
心臓に突き刺し
太陽の王子様が焼き殺されない
ようにしていました。しかし、あるとき
氷の王子様は、
ついに太陽の王子様の
熱で、焼けて死んでしまいました。

太陽の王子様は、
心を閉ざしたまま
太陽の王様になりました。

太陽様!太陽様!
民衆がひれ伏す顔に
嫌気がさして、
太陽の王様は
ますます、
自分の心臓を燃やすように
なりました。

しかし、同時に
王様は、自分の心臓を
誰にも見えない場所にしまいこみ

涼しい目をした
物静かな王様として
国をおさめました。氷の王子様は、
氷の精霊になりました。

氷の精霊は、巫女に一目惚れをし
しきりに話しかけました。

巫女は氷の精霊を
受け入れ、愛し合いました。精霊は太陽の王様の
話をしました。

巫女は、太陽の王様を
以前慕っていました。

あるとき、精霊は
精霊の国に帰るといい

巫女を守るためにと
太陽の王様の心臓と
巫女の心臓をつなぎました。

するとたちまち
巫女の心臓を
焼けるような熱さが襲いました。巫女は巫女でしたので
さまざまな人の感情を
受けて、読み取ることができました。

しかし、繋がれた心臓の
得体の知れない猛烈な熱さに
朝晩焼かれることとなりました。

それは感情でなく、
猛烈な熱さであったため、
巫女には理解できないものでした。

巫女は精霊に祈りました。
どうかこの繋がりを切ってください。

精霊は言いました。
切りません、と。巫女は、覚悟を決めて
熱を全て吸い取ることにしました。

巫女の心臓は大きく
焼けることはありませんでした。

来る日も、来る日も

巫女は心臓で太陽の熱を
受け続けました。

あるとき、それが終わったとき…

太陽の王様は、
自分を焼くことをやめ……

民の作物に光を与え
民の病気を癒すことを始めました。巫女は、最後まで
自分が国を変えたことを
言いませんでした。

王様にも
会いに行きませんでした。

だって、巫女ですから、ね。



おわり。
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