御曹司は部下の彼女に仕事も愛も教えたい

彼の側にいたい

 
 本部長は、本社へ異動が決まった時から、急に仕事のペースを上げた。今までも人よりペースが早いと思っていたけど、私を鍛えるためにしてはやりすぎな気もした。そのペースで一ヶ月が過ぎた。

 「水川。さっきの書類パソコン見ておけ。訂正箇所このプリント通りに直しておけよ。明日までだぞ」

 「……わかりましたけど」

 「なんだ、終わりそうにないのか?頑張ってくれ……」
 
 「そうじゃなくて。本部長、顔色が悪いです。無理しないで下さい。最近お帰りも遅いんじゃないですか?」

 「ああ、心配すんな。あと五ヶ月しかない」

 立ち上がってふらりとし、机にしがみついた本部長を後ろから支えた。身体が熱い。絶対熱がある。

 「本部長。今日はもう帰って下さい。会議もないですし。絶対具合悪いです。明日、役員会ですから休めないですよね」

 いつもなら言い返してくる本部長が静かだ。
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