御曹司は部下の彼女に仕事も愛も教えたい

 「残念だ。あなたが女性とタクシーに乗り込む姿を見た香那の動揺ぶりを見てその時はチャンスだと思った。彼女との仕事に立候補し、会うたびに惹かれてやり直す機会を探っていた。でも、彼女はあなたしか見てない」

 彼は俺の空いたグラスにビールを注ぐと、自分のグラスにも入れた。俺は彼の意図を察してグラスを持ち上げ彼に向けた。

 「彼女の夢は俺が実現する。必ず幸せにすると約束するよ」

 彼はグラスを合わせた。カチンと音がした。

 「悔しいな。他の男なら負ける気がしなかったのに……」

 「君も他の男よりはいい男だというのは俺もわかる。香那は目が高いな」

 「ははは……そういうところが、勝てないんですよ。自分も含めてそういうなんて。そこまで言い切れる自信は俺にはありません」

 「この仕事はまた成功するだろう。そう思わないか?」
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