臆病な私の愛し方
「…単刀直入に言おう。奈津さん、うちの子にならないかな?私はこんな歳だが未婚で独り身なんだ。奈津さんが姪にいると知ってからずっと、諦めきれなくてね…。すぐに返事はしなくともいい、真剣に考えてほしい」

 …この人と、家族に…?

 確かに、そうすれば一緒に家の金銭のことを考えてもらえる。
 しかし、両親は自分たちを認めてくれなかった親類たちに手を差し伸べてもらうことなど望んでいるだろうか…?

 私は前の彼のアツシさんを思い出した。

 アツシさんは自分の気持ちのためだけに私と一緒にいた。
 私のことも彼女と認めてくれず、自己満足のままに私のことを色々と決め、面倒と分かれば去っていった。

 この人は、私のことを見ようと、私の気持ちを考えようとしてくれるだろうか?
 テイキさんが、私に一生懸命しようとしてくれているみたいに…

「…すみません、私…」

 私がそう断りを入れようとすると、その人は言う。

「私は簡単に諦めない。まずは一緒に住むだけでも構わないんだ。奈津さん、また来るよ。時間は掛かろうと、いい返事を期待している」

 その人は私の連絡先は聞かずにそれだけを言い残し、注文したお茶とケーキのお金を払って帰っていった。
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