臆病な私の愛し方

再会

　私は新しく、地元駅の近くのコンビニでアルバイトを始めた。
　今までのアルバイトはアツシさんの家から近いところで工場の部品仕分け。

　コンビニのアルバイトは初めてで、ひっきりなしに来るお客様の相手に要領の悪い私はかなり手間取っていた。

　それでもそれが何とか形になってきた頃、“あの彼”が私のいる店に姿を現した。
　私の別れがあった日に話を聞いてくれた、あの男の人…

　彼に気付きお釣りを渡そうとする私を、あのときと同じようにじっと見ている。

　彼の視線は、今まで感じたことのない不思議なものに思える。
　今も何を考えているのかわからないけれど、危なっかしい私を心配しているのかもしれない。

　私はギクシャクしたままお釣りを渡したあと、去っていく彼を見た。

　この辺の家なのかな？
　出会った駅も私の最寄り。

　またここに来るかな…


「すいません、レジお願いします」

　いつの間にかお客様がレジに向かってきていた。

「は、はい、いらっしゃいませ…！」



　それから彼は、時々私のいるアルバイト先のコンビニにやってきた。
　学校帰りのアルバイトのため私の出勤時間がバラバラだけれど、それでもけっこう姿を見る。

　いつも彼は無表情。

　でも私はそのうち、彼が時々「ふっ」と一瞬笑っていることがあることに気付いた。私が何かおかしいのかと思ったけれど変なところは思い当たらない。

　私は彼のことが何もわからないままアルバイトの毎日を送っていた。