御曹司くんには婚約者がいるはずでは!?

第十話 忍び寄る影



「苺花、乗って」

「ほんとにいいの?ここからだとうち、氷上くんちと逆方向なのに」

「いいの。俺がまだ一緒にいたいの、わかって」


ファミレスを出てすぐのところに車を回してくれた榎田が車のドアを開けてくれている。


「っ・・・・・・わ、わかった。じゃあ、お願いします」


一瞬で頬を赤く染めた苺花がおずおずと俺の送迎車に乗り込んだ。


いちいち反応が可愛い。


俺、相当重症かも。


どんどん苺花の沼にハマっていく。



「お久しぶりですね、高沢様」


運転席に戻った榎田が振り返り、苺花へ微笑みかけた。


「お久しぶりです。私まで送ってもらうことになってすみません。ありがとうございます」


苺花と榎田が挨拶を交わし、車はいつものように走り出した。



他愛もない話をしながら俺は、繋いだ手から伝わる苺花の体温にドキドキしていた。


もっと近くに行きたくて、


もっと触れたくて。


そして、俺のキスしたい衝動がMAXになったとき、車が苺花の家の前に停車した。



「じゃあね、琳凰くん。送ってくれてありがとう。榎田さん、ありがとうございました」


ご機嫌にそう言って車を降りて行ってしまった苺花。


バタンッとドアは閉められ、笑顔で手を振る苺花に見送られながら車は静かに発進した。

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