結婚の条件
交際は順調そのものだった。明日香ほどの女性に出会えることは、この先もう絶対にないだろう、と確信していた貴也は、早い段階から結婚を念頭に置いていた。それは、初めて明日香の家を訪れた日、彼女の手料理を食べた時からだ。
そしてその日、明日香が頬を紅潮させながら言った。
「実は一目惚れだった」と。
街で見掛ける美女と野獣カップルに好奇の目を向け、どんなカラクリがあるのだろうかとよく考えていたが、何のことはない。好みは人それぞれ、というだけのことだ。
だからと言って胡座をかくことなく、貴也は明日香のことを今まで大切にしてきた。そして口にはしないが、明日香も自分との結婚を意識している、と貴也は感じていた。
「来週の記念日は仕事だけど、夜は一緒に過ごそうな」
いつものように明日香の家で食事を終えた後、ソファーでまったりしながら口にした。
明日香は嬉しそうに目を細めて体をすり寄せ、猫のように甘えてきた。
やはり明日香しかいない、と貴也は決心を固めた。
記念日当日の昼過ぎ、貴也は明日香にメールを送った。
『今日は残業になりそうなんだ』
すぐに明日香から返信があった。
『気にしないで。遅くなっても大丈夫だよ。待ってる。仕事頑張ってね』
明日香の落胆した表情が目に浮かび、少し胸が痛んだ。
ひとつの愚痴もこぼさないところがいじらしい。
デスクを整理して、貴也が会社を出た時刻は五時五分。久し振りの定時退社だった。朝から全く仕事が手に付かないくらい、貴也の頭は明日香のことでいっぱいだった。
そしてその日、明日香が頬を紅潮させながら言った。
「実は一目惚れだった」と。
街で見掛ける美女と野獣カップルに好奇の目を向け、どんなカラクリがあるのだろうかとよく考えていたが、何のことはない。好みは人それぞれ、というだけのことだ。
だからと言って胡座をかくことなく、貴也は明日香のことを今まで大切にしてきた。そして口にはしないが、明日香も自分との結婚を意識している、と貴也は感じていた。
「来週の記念日は仕事だけど、夜は一緒に過ごそうな」
いつものように明日香の家で食事を終えた後、ソファーでまったりしながら口にした。
明日香は嬉しそうに目を細めて体をすり寄せ、猫のように甘えてきた。
やはり明日香しかいない、と貴也は決心を固めた。
記念日当日の昼過ぎ、貴也は明日香にメールを送った。
『今日は残業になりそうなんだ』
すぐに明日香から返信があった。
『気にしないで。遅くなっても大丈夫だよ。待ってる。仕事頑張ってね』
明日香の落胆した表情が目に浮かび、少し胸が痛んだ。
ひとつの愚痴もこぼさないところがいじらしい。
デスクを整理して、貴也が会社を出た時刻は五時五分。久し振りの定時退社だった。朝から全く仕事が手に付かないくらい、貴也の頭は明日香のことでいっぱいだった。