攻略対象者に転生しましたが推しの親友枠におさまったので、彼の初恋を見守ることにします!
「……どういう意味、なの?」

「お前はさ、辞典を倒すことに気を取られてる。
 この前までしていたシガレットケースを倒したやり方を忘れている。
 どうやって倒してきたかを思い出せ。
 やり方は同じなんだ。
 目の前の物の大きさに囚われるな」


 
 シガレットケースを倒したやり方……

 ここへ来た翌日。
 朝昼兼用の旨い食事をして、食器を片付けて。

 一番最初に養父から教えられた、物を撃つ魔法。


 思いっきり指先に空気を引き付けて、弾く。

 
 辞典が少し動いた。


「良くやったな、グレン。
 お前にはやっぱり才能がある。
 それを連射してみろ」


 どうにか、これで孤児院に返されることはない、と安心出来るようになったのは、辞典がレンガに替わった頃だ。

 
 「お前はもっと、父親を尊敬しろ」

 そう言われるくらい、養父に対して。

 遠慮なく、話せるようになったのも、同じ頃だった。


  


 やがて、5年の歳月が過ぎた。
 グレンジャーは13歳になり、王立貴族学苑中等部へ入学した。


 そして、グレンジャーは『彼』に出会った。

 前世の柚希が大好きだった『乙花』のヒーロー……


 推しの、オスカー・オブライエン・コルテスに。
< 12 / 97 >

この作品をシェア

pagetop