攻略対象者に転生しましたが推しの親友枠におさまったので、彼の初恋を見守ることにします!
 御者に比べて、消された記憶の量が違うからだろ、とオスカーが淡々と言う。


 意識のない女をそこに寝かせて、次はビルに近付いた。
 笑えたのは、いつも偉そうにしていたビルが失禁していたことだった。


「た、助け……」

「もう何もせぇへんわ。
 オスカー、こいつの記憶はどうする?」

「今日のこと、俺達のこと、あの女のこと。
 それからお前との昔のこと。
 全部消してやろう」

「せやな、そうしよか」

「や、やめ……」


 倒れたまま、上半身だけ、体をまたいだオスカーが起こす。
 ビルの目を見て、グレンジャーは念じた。


 忘れろ、忘れろ、俺のことは。
 だが、もしまた……同じ様に自分より力が弱いものに暴力をふるうのなら、その時は俺の赤い目を思い出せ。
 お前の空っぽな頭の中、赤い目がいくつもいくつも思い浮かぶようになれ。
 お前の悪事を俺は見ているからな。


 ビルは白目を向いて、よだれを流して意識を失った。


「まさか、狂わせてないよな?」

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