攻略対象者に転生しましたが推しの親友枠におさまったので、彼の初恋を見守ることにします!
「実はね、今回の事案では、オーハシさんが1番最初にここに来たひとなんだよ。
 これから、続々と同じ事故で亡くなってしまった人達がやって来る。
 何人だったかな……貴女を入れて43名、って聞いてるんだけど、多いね」

「……」


『オータニサン』みたいに、少年が話す『オーハシさん』の語尾が上がっているのは、聞き流せたが。
 事故で亡くなった、は聞き流せなくて。
 柚希はようやくはっきりと思い出して、初めて震えた。


 あれ、だ。
 あの、『乙花』の。
 ファンミで乗ったバス。

 最後のサービスエリア休憩で、柚希は見ていた。
 バスの運転手が自販機のコーヒーを片手に、忙しなく煙草を2本立て続けに吸っていたこと。

 どうして、喫煙コーナーに目が行ったのか、わからないが。
 その運転手の様子が気になって。
 煙草を吸い終わって、彼は肩を叩いたり、背筋を伸ばしたり。
 その様子から、あのひと疲れてて眠いんやわ、と感じたのだ。


 長時間の夜行バスなんかじゃなかった。
 午後1時の集合は、当日新大阪から新幹線で来た柚希にも楽な時間だった。
 その時間から出発して夕方前には目的地に到着する。
 辛い行程ではないはずだ。
 後1時間だけやし、おっちゃん頑張ってな、と思った……



「43名をそれぞれ違うところに送るのも疲れるしね。
 最初に来た貴女に決定権をあげるよ。
 オーハシさんが希望した転生先に43名全員を送ることにしたからね。
 その辺り、よくよく考えて答えてね?」

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