Far away ~いつまでも、君を・・・~

晩婚化、非婚化が進んでいると言われる今の日本。また入籍はするけど、式は挙げないというカップルもいる。しかしその一方で、やはり一生に一度の晴れやかな舞台に憧れ、希望に胸を膨らませて、来場するカップルは決して少なくない。


そんな2人の幸せな門出にふさわしい結婚式、披露宴を提案し、また2人の希望を実現する為に働くウェディングプランナ-。その責任は重く、また決して肉体的にも精神的にも楽な仕事ではない。


それに正直に言えば、彩にとっては、決して望んで就いた職業ではない。最初は戸惑い、大小含めて、何度もミスもした。クレ-ムもあったし、打ち合わせが遅々として進まず、泣きたくなることもあった。


だが、接客から成約、そして何回にも渡る打ち合わせ。長ければ1年にも及ぼうかという時を経て、やって来た晴れの日。そのお客様の幸せなイベントに、プランナ-は最も身近で立ち会うことが出来る。そして式の主役である、新郎新婦はもちろん、その両親やゲストまでもが、幸せな笑顔を浮かべているのを見た時、プランナ-は全ての苦労も吹き飛び、心からの満足感と喜びに浸ることが出来る。


(こんなに大勢の人と幸せな時間を共有出来て、感動できる仕事なんて、他には絶対にない。)


いつしか、彩はこの仕事にやりがいと誇りを感じるようになっていた。


そして、彩の日常は、慌ただしくも、過ぎて行く。多くのカップルが彩のもとを訪れ、「その日」の為の準備を重ねて行く。


そんなカップルの中に、遥と町田がいた。親友彩のプロデュ-スでの挙式にこだわる2人と、自分たちの地元での面子にこだわる町田の両親との話し合いは難航したが、町田の転勤先が言われていた「西の方」ではなく、なんと地元にほど近い都市に変更になって、発令されたことで急転した。


『両方でやることにした。』


「えっ?」


『正式な式は彩のホテルで挙げさせてもらう。その後、地元で親族や地域のみなさまへのお披露目式をやるってことで、話がついたんだよ。だから、よろしくね。』


そう声を弾ませて、遥が電話してきた時、2人が最初に打ち合わせに来てから約2ヶ月の時が過ぎていた。


(お金持ちは、考えることが違う・・・。)


内心、少し唖然とした彩だったが


「わかった。プランナ-としても遥の親友としても嬉しいし、ありがたいよ。だから精一杯、頑張らせてもらいます。」


すぐに笑顔になって、答えていた。
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