Far away ~いつまでも、君を・・・~

11月もまもなく終わろうかという、快晴の日曜日。颯天高校弓道部は、翌年初めに行われる全国大会の予選を迎えていた。


今まで団体、個人ともに全国大会には縁のない颯天高だが、今年は先日の県大会の結果から、主将葉山千夏が、一躍注目を集める存在になっていた。


周囲の盛り上がりもかなりのもので、校長などは応援ツア-を組もうと騒ぎ出したが、弓道は野球やサッカ-、バレ-ボ-ルなどと違い、応援団が大挙押し寄せて・・・といった性質の競技ではないし、騒ぎが大きくなれば、千夏が余計なプレッシャ-を感じるだけ。


そう考えた尚輝が、浮かれる周囲を抑えるのには一苦労した。


そして迎えた当日。それでも千夏の親しい友人たちの何人かは、応援にやって来るようだったが、さすがにそこまで制止することは、尚輝も出来なかった。


(彩先輩だって、それなりに注目はされてた選手だったけど、こんな騒ぎには全然ならなかったよな。)


やれやれという思いを抱きながら、会場に向かう尚輝。視線の先には、他の部員たちと、高校生らしくキャッキャッと話している千夏が。その姿からは、プレッシャ-の欠片も感じさせない。


(彩先輩は、弓道に関しては、ストイック過ぎるくらいだったから、試合前に気楽に声なんか掛けられなかったよなぁ。それに引き換え、葉山は・・・大したもんだ。)


あくまで自然体の千夏を見ながら、尚輝は感心しきりだった。


会場に着き、着換えて集合した部員たちを率いて、試合会場に入ると、観覧席の一隅に陣取る友人たちをめざとく見つけた千夏は、満面の笑みで、彼女たちに手を振っている。


「葉山、試合会場だぞ。」


「はい、すみません。」


たしなめる尚輝に、千夏は頭を下げるが、「叱られちゃった」とか言いながら、ペロリと舌でも出しそうな雰囲気だ。


(まぁ、ガチガチに緊張するよりはマシだが・・・。)


感心半分、呆れ半分、尚輝は複雑な思いだった。


試合はまずは団体戦から。男女1チ-ムずつが参加した颯天高は、女子が千夏の活躍で、予選を通過したが、全国大会出場権は遠かった。


だが。ここまではいわば想定内。注目はそのあとの個人戦だ。
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