Far away ~いつまでも、君を・・・~
こうして、彩の教育担当としての日々が始まった。


「彩さんは、最初はベルガ-ルだったんですか。」


「うん。私もずっとホテリエに憧れてて、ベルガ-ルからフロントクラークへと思ってたら、まさかのウェディングプランナ-転身の辞令を受けて。びっくりしたけど、やってみたらものすごいやりがいのある仕事で。今では、転身してよかったと思ってるよ。」


予想もしない辞令に、戸惑いを隠せななかった当時の彩を、陰に陽に励まし、そして一人前のプランナ-になれるように導いてくれたのは優里だった。彼女に対する感謝の思いを、彩は忘れたことがない。


(優里さんがいなかったら、間違いなく今の自分はない。だから今度は私が、静をちゃんと導いてあげないと。それが私が優里さんに出来る何よりの恩返しだし、また先輩としての私の責務だから。)


各施設を、目を輝かせながら見て歩く静を見ながら、彩は決意を新たにする。更に


(千夏ちゃんを始めとした生徒たちに向き合って、日々自分を成長させて頑張っている尚輝に、負けないようにしないと。)


という思いもあった。


かつて、彩自身がそうだったように、静もまずは彼女に付いて、行動を共にして勉強。座学を挟みながら、プランナ-としての業務の流れを見せて行く。


「今日は今春に入社しました実習生の相川も同席させていただきます。よろしくお願いします。」


週末には、お客様にそう断って、実際の打ち合わせを体験させた。


その日の研修が終わり、彩に提出する日誌は、可愛らしい丸文字で、でもその日の感想や気が付いたことが、ビッシリ書かれており


(こりゃ、私の新人の時なんか、足元にも及ばないな・・・。)


と舌を巻くしかなかった。


GWに入ると、研修はいったん中断。実習を兼ねて、レストランの応援に入ったり、早くも新規来場者の案内にも立った。


「期待の星」という前評判は、伊達ではないようだった。
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