Far away ~いつまでも、君を・・・~
しばらく、母親に言われるがままに、家事に勤しんでいた彩だったが、9月に入ると遥から連絡が入った。


『相変わらず、家事手伝いしてるの?』


「いいえ、廣瀬家の主婦は今や、この(わたくし)でございます。」


遥の問いに、大真面目な口調で彩が答えると、次の瞬間2人は大笑い。


『そっか。そんな大黒柱をお誘いしたら、廣瀬家にご迷惑かな?』


「えっ?」


『どう、来週ウチに泊まりに来ない?』


「遥・・・。」


『浩人がまた出張でいないんだ。結婚式の時、マイスイートホームのお客様第一号は彩って約束したのに、お互い忙しくて、実現してないじゃん。結婚当初のスイートホームは、今や子育てに追われて、見る影もなく散らかっちゃってるけど、それでもよろしければ、是非。』


「嬉しい。でも大志くんのお世話で、大変なんでしょ?」


心配する彩に


『授乳のサイクルもだいぶ落ち着いてきたし、まだ夜泣きも始まってないから、夜はかなり楽になったよ。まぁ、来てもらっても、どこにも行けないで、部屋でひたすら駄弁るだけになっちゃうと思うけど。それでもいい?』


遥は答える。


「もちろん。じゃ是非伺わせていただきます!」


彩は声を弾ませた。


そして当日


「掃除頑張ったから。」


と言いながら、笑顔で出迎えた遥に、手土産のケーキを手渡し、スイートホームに上がった彩。


2LDKのマンションは新婚夫婦と赤ちゃんが暮らすには十分の広さで、ダイニングに敷かれたベビー布団では、大志がスヤスヤとお昼寝タイム中。


「やっと会えた、可愛いねぇ。」


顔をほころばせて、覗き込んだ彩は


「産まれた時、病院に行けなくてゴメンね。ちょうどいろいろ取込中だったから。」


苦笑いで謝る。


「そんなの全然大丈夫。それより今、大志が着てる洋服。」


「あっ、私がプレゼントしたのだ。」


「そう、すごく可愛い。ありがとうね。」


「どういたしまして。さっそく着てもらってるなんて、光栄だよ。」


「いえいえ。疲れたでしょ、座ってよ。今、お茶入れるから。」


「うん、ありがとう。」


少しして、彩持参のケーキを食べながら、2人のお喋りタイムが始まった。


「写メ送ってもらった時も言ったけど、大志くん、マチヒロそっくりだね。」


「誰が見ても浩人の子供だって言われる。浩人の赤ん坊の時に、瓜二つだって。」


「マチヒロも可愛くて、しょうがないだろうね?」


「うん、産まれる前は女の子がよかったとかブツブツ言ってたくせに、今やデレデレ。笑っちゃうよ」


「なるほど、目に浮かぶよ。その光景。」


笑い合う2人。
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