Far away ~いつまでも、君を・・・~

インタ-ハイ予選当日。部員たちを引率して、会場入りした尚輝に


「二階。」


と声が掛かった。振り返ると


「児玉先生。」


元颯天高弓道部顧問で、尚輝にとっては恩師である児玉光雄だった。


「ご無沙汰してます。」


そう言って一礼した尚輝に


「ああ、元気そうだな。」


「お陰様で。先生は今日は?」


児玉は異動先の高校に弓道部がなく、現在は弓道を離れている。


「うん。弓道教職員協会経由で、大会運営の応援に駆り出された。ここに来るのも久しぶりだ。」


「そうですか。」


「颯天高は頑張ってるみたいだな。情熱的な顧問に加えて、2人の優秀な女性コーチを迎えて、どんどん力を付けていると評判だぞ。」


「ありがとうございます。教え子の葉山千夏が卒業後から、そして廣瀬彩先輩が去年の秋から、週に1回のペースで指導に来てくれてます。」


「そうなんだってな。葉山さんはともかく、廣瀬がまさか弓道部に帰って来てるとはな。話を聞いた時は驚いた。」


「はい。ご縁があって。生徒たちからも非常に信頼の厚いコーチで助かってます。」


「ご縁か。お前の口から、廣瀬と縁がと聞くと、意味深なものを感じるな。」


「先生・・・。」


「ハハハ・・・。それで廣瀬は今日は?」


「仕事です。」


「そうか、久しぶりに会えるかと楽しみにしていたんだが、残念だな。よろしく伝えておいてくれ。」


「はい。」


「じゃ、颯天高の活躍、楽しみにしてるぞ。」


「ありがとうございます。失礼します。」


普段は温和だが、こと弓道に関しては、厳しくそして熱心な顧問だった児玉。彼の当時の姿が、今の尚輝にとって、1つの理想像になっていることは間違いない。そんな恩師との思いがけない再会に、尚輝は心温まるものを感じていた。


やがて部員たちの準備が整い、正装を身に着けた彼らが、尚輝の周りに集まった。


「いよいよだな。」


部員1人1人の顔を見渡しながら、尚輝が口を開いた。


「ここまで来たら、もう俺の言う事は何もない、全員が自分と仲間を信じて、持てる力を100%出す、それだけを考えて行け。」


「はい!」


そして主将を先頭に、会場に向かう選手を見送る尚輝。


(いよいよ始まります。彩先輩、アイツらに力を貸してやって下さい。)
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